会長挨拶

日本農業気象学会長 平野 高司

3月の総会でお認めいただき,今期も会長を務めることになりました。引き続きよろしくお願いいたします。

はじめに,全国大会について述べさせていただきます。コロナ禍の収束の見通しが未だ不透明であり,対面での集会や会議の開催が難しくなっています。本学会も2020年,2021年と2年続けて全国大会および総会を対面で開催することができませんでした。今年はオンデマンドのリモート大会でしたが,発表件数は133件でした。対面開催であった2014~2019年の平均(171件)に比べて2割強の減少になります。従来の対面による全国大会でみられた活発な質疑・応答や,それらにともなう研究の新たな展開を感じさせるような議論は,リモート開催になったことで幾分少なくなったかもしれません。しかし,リモート開催は社会的な要請であり,また会員各位の安全確保の点からもやむを得ない選択であったことをご理解いただきたいと思います。今後の感染状況によっては再度オンラインでの開催となる可能性はありますが,関東甲信越支部を中心とした2022年全国大会の準備が始まっています。来年3月に高崎市にある高崎健康福祉大学で皆さまにお会いできることを楽しみにしております。

続きまして,本学会理事会が中心となって推進してきました活動の現状と今後の活動方針について述べさせていただきます。

会員サービスの向上のため,学会基金を使って本学会のウェブサイトを2020年に改訂しました。英文のページはまだ建設中ですが,閲覧の軽快感と視認性が格段に向上しています。ぜひ訪問していただき,さらなる改善のためのご意見等をお聞かせください。また,谷前編集委員長からの報告(生物と気象,20巻4号)にありますように,英文誌(Journal of Agricultural Meteorology)の国際的なインパクトを高めるため,完全オープンアクセス化や審査・発行プロセスの透明化,編集体制の強化などを進めてきました。会員の皆さまには,研究成果の発表の場として活用していただくことはもちろんですが,ご自身の研究成果を発表される際には本誌に掲載されている論文を積極的に引用していただければと思います。

前回の会長就任挨拶(生物と気象,19巻4号)でも述べ,またこの3月の総会でも触れさせていただきましたが,本学会の会員数は長期的な減少傾向にあります。会員数の減少は本学会だけではなく,多くの学会が抱えている社会構造に起因する問題でもあり,会員増に転じさせることは容易ではありません。そのため,会員数がある程度減少した状況でも活動を持続させることのできる学会の組織・運営について,2020年に理事会で検討しました。次世代活性化理事が実施したアンケートの結果(「次世代の学会のあり方」に関する若手・中堅会員の意見)(生物と気象,20巻3号)をたたき台とし,実年会員(支部長,評議員)を対象としたアンケート調査を行うとともに3名の学会顧問から意見を伺い,学会運営業務の効率化および組織・運営体制のスリム化を主な目標として議論しました。その結果,1)学会誌の出版形態,2)評議員会のあり方,3)理事会のあり方,4)支部の活動・運営,5)学会財産の活用,6)全国大会の開催方針,7)学会財政の健全化,8)研究部会の活性化,9)永年功労会員表彰委員会のあり方を主要課題とし,今期の理事会で重点的に検討し迅速に対応していくことになりました。比較的大きな制度改革になることも予測されますので,評議員会および総会での積極的な議論を期待しております。なお,財政健全化につきましては,会計理事の提案に基づき,会費の自動引き落としや不要者への雑誌冊子体の発送中止など,支出削減のための方策をすでにいくつか実施しております。

民主的な運営と様々な研究分野に対する門戸の広さは本学会の特色・気風であり,かつ守るべき伝統であります。今後とも,このような素晴らしい特色・気風が失われることがないよう十分に留意し,上述した持続可能性を目指した改革を進めます。皆さまのさらなるご理解,ご協力をよろしくお願いいたします。

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